Text SSや考察など

マトリとは何の略称か

さて、いきなり問題です。

「マトリの強制介入班!」
とは、SAC#20でのトグサの台詞ですが、ではこの“マトリ”の正式名称は?

設定資料集などを持っている人は調べてみてもOK!
制限時間は3分です。

ちっちっちっちっ・・・

ちーん。

正解はこちら!

厚生労働省の麻薬対策課強制介入班。通称「マトリ」。その名の通り、公に処理できない事態を強制的に解決する。「マトリ」は現在の厚生労働省に実在する麻薬取締部(銃器も装備)の通称でもある。
(『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX VISUAL BOOK』 p112より抜粋)

という事で“厚生労働省麻薬対策課強制介入班”が正解でしたー。

・・・・・・

ここで“あれ?”と思われた方、流石です。
単純に上の回答をトグサの台詞に当て嵌めてみると・・・

「厚生労働省麻薬対策課強制介入班の強制介入班!」

強制介入班の強制介入班・・・どんな班だ。
思わず突っ込んでしまいました。

じゃあ“厚生労働省麻薬対策課”か?・・・と思いきや。
“マトリ”は“麻薬取締(やくとりしまり)”の略。あれ?そうすると“麻薬取締課”?

疑問に思ったので僕が所持している全ての攻殻関連の資料・データ集を広げて、強制介入班の呼称を書き出してみました。
結果は以下の通り。
一冊の本に表記が数種類あるのは、事件解説の項目と安岡ゲイルの項目でそれぞれマトリの記述があるからです。


*HOBBY JAPAN MOOK 攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX VISUAL BOOK
 p057 厚生労働省麻薬取締課強制介入班
 p079 厚生労働省・麻薬対策課強制介入班(通称、マトリ)
 p112 厚生労働省・マトリ

*ROMAN ALBUM 攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX ULTIMATE ARCHIVE
 p026 マトリの強制介入班
 p055 厚生労働省 医薬局麻薬対策課“マトリ”の強制介入班

*別冊宝島 僕たちの好きな攻殻機動隊
 p031 厚生労働省麻薬取締強制介入班
 p075 厚生労働省・麻薬取締強制介入班、通称「マトリ」

*別冊宝島 僕たちの好きな攻殻機動隊 全キャラクター徹底解析編
 p007 麻薬対策課強制介入班
 p088 厚生労働省・麻薬取締局の強制介入班(マトリ)

*TJ MOOK イノセンス&攻殻機動隊 コンプリートブック
 p053 麻薬取締強制介入班マトリ
 p058 麻薬対策課強制介入班

*日経BPムック プロダクションI.Gマガジン
 p054 麻薬取締課の強制介入班

*攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX 電撃データコレクション
 p029 マトリ/厚生労働省麻薬取締局強制介入班
 p140 厚生労働省麻薬取締局強制介入班「マトリ」


はい、漢字ばっかりでさっぱりですね。
かく言う僕も頭がパニックです。
集計してみると・・・

  • 麻薬取締課=2箇所
  • 麻薬対策課=4箇所

多数決で“対策”の勝ちー・・・って、そういう企画ではありません。
しかもこれ以外の表記があって・・・

  • 麻薬取締強制介入班(“課”がない)=2箇所
  • 麻薬取締局=2箇所

もう何が何やら。
それ以前に一冊の本で異なる表記が複数存在しているって時点で語るに落ちてます。
しかも強制介入班そのものを“マトリ”と表現している本もあれば麻薬対策課(及び麻薬取締課・麻薬取締局)をまとめて“マトリ”としているものもある。
ここまで意見の分かれる組織も珍しいですね。

とまあ、かなり混乱してきた所で、徳間書店の『アルティメットアーカイヴ』より、とある記述を抜粋してみます。

ひまわりの会を襲撃したのは麻薬対策課強制介入班、厚生労働省の実行部隊である。現在、厚生労働省には実際に「医薬食品局 監視指導・麻薬対策課」というものが存在し、麻薬取締官が所属している。
(『ROMAN ALBUM 攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX ULTIMATE ARCHIVE』 p055より抜粋)

さてここで述べたいのが、現在の日本に於いて麻薬取締官が実際に所属している実在の厚生労働省の部署。
最初に述べた『VISUAL BOOK』からの抜粋では“麻薬取締部”となっていますが、こちらでは“医薬食品局 監視指導・麻薬対策課”。
実際のところどっちが正しいのか、ネットで調べてみました。


監視指導・麻薬対策課
所掌事務
・不良医薬品等の取締に関すること
・医薬品等の広告に関する指導監督を行うこと
・医薬品等の検査及び検定に関すること
・薬事監視員等に関すること
・麻薬、覚せい剤等に関する取締に関すること
・麻薬取締官の職務に関すること
・麻薬、覚せい剤等に関する取締に関すること覚せい剤等に係る国際協力に関すること

(電子政府の総合窓口  http://search.e-gov.go.jp/servlet/Organization?class=1050&objcd=100495&dispgrp=0100)

麻薬取締部
* 不正ルートの取締り
* 国際協力
* 正規ルートの指導・監督
* 中毒者対策・啓発活動
(近畿厚生局  http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/div_mayaku.html)

麻薬取締官は、厚生労働省の地方支分部局である地方厚生局(地方厚生支局を含む。)に設置されている麻薬取締部(沖縄麻薬取締支所を含む。以下同じ。)に所属し、薬物乱用防止のため、不正ルートの取締、正規ルートの監督さらに乱用防止啓発活動まで、幅広い分野での活動を展開しています。
(麻薬取締官  http://www.nco.go.jp/outline/index.html)

麻薬取締官は、厚生労働大臣の指揮監督を受けて、下記の薬物関連5法に違反する罪、刑法第2編第14章「阿片煙に関する罪」の他、麻薬、あへん若しくは覚せい剤の中毒により犯された罪について、刑事訴訟法に基づく司法警察員としての職務を行っています。
(麻薬取締官  http://www.nco.go.jp/injustice/investigate.html)

上記を含め諸々の検索結果を判断すると、どうも麻薬取締官が実際に所属しているのが“厚生労働省地方厚生局(又は地方厚生支局) 麻薬取締部及び沖縄麻薬取締支所”であり、麻薬取締官の職務を統轄しているのが“厚生労働省 医薬食品局 監視指導・麻薬対策課”のようです。

攻殻SACの強制介入班そのものはフィクションですが、例えばゲイルら麻薬取締官を医薬局(恐らく現在の医薬食品局に相当)局長の新美が極秘裏にスカウトして強制介入班を組織していたと推測するならば、“マトリの強制介入班”の正式な名称は

厚生労働省 地方厚生局(多分近畿厚生局) 麻薬取締部 強制介入班

となります。おお、これなら“麻薬取締”が入るから“マトリ”の省略も納得ですね。



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では上記を踏まえた上で、DVDによる検証を行いたいと思います。
調査対象はS.A.C.#22「疑獄 SCANDAL」。

まずは荒巻と新美の遣り取りから。

荒  「失礼します。」
「何だね君は。」
「公安9課の荒巻です。昨夜のひまわりの会掃討作戦は、マトリの所長を飛び越え貴方から直に命令が出ていたそうですが、その理由をお聞かせ願いたい。」
「貴方失礼でしょう?!」
「構わんよ。丁度その事で会見に出向く所だ。ひまわりの連中は狡猾でね、慎重に事を運ぶ為に、強制介入班にしか知らせずに進めてきた作戦だった。ただ残念なのは、奴等が徹底抗戦の構えを見せた為に、已む無く強硬手段を取らざるを得なかったという事だ。全く、建物に火まで放ってね。」
「局長、そろそろ・・・。」
「どうやら我々の出番ではないようですな。しかし、一つだけ気になる事が。これは何かの偶然だと思うのですが、昨夜あの現場にうちの捜査員が一人、居合わせておりましてね。」
「・・・!」
「・・・。」
「ではまた、いずれ。」

(S.A.C.#22より)

注目すべきは荒巻の2番目の台詞。“マトリの所長を飛び越え”と語っている事から類推するに、強制介入班の直属上司の肩書きは“所長”である模様。じゃあ介入班が所属しているのは“○○所”?“麻薬取締所”とか?

荒  「儂は一旦本部に戻る。ボーマは新美の取調べに同行しろ。パズは麻薬取締局の人事課に行き、介入班の残党を洗い出せ。まずはそこからだ。」
パ  「了解。」
ボ  「了解。」

(S.A.C.#22より)

やっと答えらしきものが出てきましたね。どうやら“マトリ”とは“麻薬取締局”の事で、局内にわざわざ人事課がある事から想像するに、強制介入班もここに所属するらしい。
・・・おや?先程の“○○所”と食い違いますね。“麻薬取締局○○所”という事なのか。
しかも、重大且つ致命的な問題が。

“医薬局”と“麻薬取締局”じゃ、命令系統的に平行関係にあるんですけど!!!

どーしてくれようこの事実。
例えるならSSSで登場した公安6課の中村課長が我等が少佐に命令を出しているようなものです。完全なる越権行為です。命令系統カン無視も良いとこです。
これが課長の言い間違いなら問題は解決するのですが(それはそれで色々問題がありますが・・・)、このあと登場する人事課課長室のシーン冒頭。
入口脇に部屋の名前が。

 “麻薬取締局人事課 課長室

これで“麻薬取締局”の存在が確証されました。あああ、どうすれば。
と思った処でふと気付く。

そういえば、新美局長の正式な役職名ってDVDでは一度も語られていないような・・・。

慌てて本編DVDやOfficial Logを見てみると、確かに“厚生労働省幹部の”とか“厚生省の”としか書かれていません。公式の設定画にも“K-3 #20 厚生労働省/新見局長”としか書いていません(『ROMAN ALBUM 攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX ULTIMATE ARCHIVE』p078より抜粋)。
どうやら設定集とかで“医薬局局長”と書かれていたのをそのまま鵜呑みにしていた模様。
再び設定資料集を広げてみます。


*HOBBY JAPAN MOOK 攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX VISUAL BOOK
p059 医薬局局長

*ROMAN ALBUM 攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX ULTIMATE ARCHIVE
p026 厚生労働省医薬局局長
p056 医薬局長
p057 麻薬医薬局長
p078 厚労省の医薬局局長

*別冊宝島 僕たちの好きな攻殻機動隊
p075 厚労省・医薬局の局長

*別冊宝島 僕たちの好きな攻殻機動隊 全キャラクター徹底解析編
p007 厚生労働省麻薬取締局(局長:新美)
p087 厚生労働省麻薬取締局局長

*TJ MOOK イノセンス&攻殻機動隊 コンプリートブック
p058 厚生労働省医薬局長

*攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX 電撃データコレクション
p140 マトリの新美局長


大別すると、

  • 医薬局=6箇所
  • 麻薬取締局=2箇所
  • その他(麻薬医薬局・マトリ)=2箇所

結局これ全部でっち上げだったんですね。どうりで諸説紛々あるわけだ。
例え公式の設定集でも、書いているのは“攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX”を実際に製作した人達ではないのだから鵜呑みにするな、という事でしょうか。

仕方ないのでここからは南部個人の憶測で話を進めます。
2030年の攻殻世界では、“厚生労働省 医薬食品局 監視指導・麻薬対策課”が独立して新たに“厚生労働省 麻薬取締局”を設立、地方厚生局に属する麻薬取締部の麻薬取締官とは別箇に麻薬取締局に属する麻薬取締官を置き、それが即ちゲイル等強制介入班になる訳です。
そして仮に新美が(設定集で多く言われているように)“医薬局”の局長であった場合、麻薬取締局に属する強制介入班に直接命令を下し私兵団化する事は、麻薬取締局への完全なる越権行為になるので矛盾が生じます。この為、新美の正確な肩書きは“厚生労働省 麻薬取締局 局長”となりますね。


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紆余曲折ありましたが、ここでの結論。
最初に述べたトグサの台詞「マトリの強制介入班!」とは

厚生労働省 麻薬取締局 ○○所 強制介入班

の事であると思われる。
但し、これはあくまでも僕の個人的な見解であり、誤りである可能性も十二分にありますのでご了承を。

<凡例>
  文章…本&ネットからの引用文(アンダーラインは全て筆者)
  …荒巻大輔
  …新美局長
  …新美の秘書
  …パズ
  …ボーマ



(2008年03月02日・同年04月29日分ブログからの転載・一部改正)

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